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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页

青空文庫

二

二

雪乃母娘を送って行った駕の者と、近村の百姓などであった。

「ご家来さま。たいへんじゃ。すぐに。すぐに来ておくんなさい」

と、駈けこんで来て、

「はやくせぬと、駕のうちの女子方も、どうなることやら。――お附きしていた牧野惣左衛門さまも、いきなり二、三名のくせ者に不意討ちをくって、一たまりもなく斬りころされなすった」

と、口々にいう。

「なに、暗討ちに」

総立ちになった時、もう若ざむらいの頭数は、半分ぐらいしかいなかった。その余の者は、刀の置いてある控え部屋へ、さッと行ったのもあるし、寸間も惜しんで、大刀を持たずに縁を跳んで、すでに門の外へ駈け出しているのもいた。

「すわれ」

老公はたしなめた。ここの人数の半分も行けばもうよろしいというのである。

縁先では、山荘の家臣たちが駕の者や百姓たちの、ことば多くて要領を得ないはなしを、努めて取りしずめながら、仔細を訊きとっている。

そのあいだ――開けひろげてあるために明滅の烈しい燈影を、稲妻のように浴びながら、老公もほかの者も、じいっと座に耐えていた。

が、すぐに、剣持与平が訊きとったことを、そこへ来て老公へ早口につたえた。