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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页
「どういたしまして。そう仰っしゃられると、てまえが面目ありません」
「なぜか」
「始めのことを思い出します。……初めて旦那が、図面をお持ちになって、いくらでひきうけるかと、おはなしにお越しなすったときは、水戸さまと聞いて、あいては大名、これは取り放題のうまい仕事がころげこんで来たと――このご建碑で、正直、てまえ根性では、ひと儲けするつもりでございました」
「気のどくしたな。とんだあてがちがって」
「いえいえ、あてがちがってくれたからこそ、てまえは今日でも、いえ一生涯、いい心もちを持っていられると、真実、ありがたく思っております。……もしそれが思いどおりに行って、この碑で、悪儲けでもしてごらんなさい。生涯、どんなに寝ざめがよくないかしれません。いや、死んだのちまで、この碑にたいして、後悔がのこりましょう。石は腐りませんからね」
「そちの義心や、職人どもがみな献身的にやってくれていることは、先ごろ書状のうちにもしたためて、水戸の西山荘においであそばすお方へも達しておいたぞ」
「旦那のおかげです……。まったく、旦那が、毎日のように、この碑に彰わされる正成公というお方のはなしを、てまえのような無智無学なものにもわかるように、根よく語り聞かせてくださらなかったら、きっと、旦那の眼をかすめて、手をぬくことしか、この仕事にも考え