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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页

青空文庫

「だれかと思えば、てめえはここの墓番だな。邪魔すると、ついでに、ぶった斬るぞ」

「降りろっ。足が曲がるぞよ」

「な、なんだと」

「汝らの足に踏ませていい霊地ではない。降りねば、投げとばすぞ」

「こいつが、大口を」

吠え終らないうちを、大口の証明は介三郎が伸ばした両腕によってなされた。かれはふたりの浪人者の襟がみを、まことに無造作につかんでしまった。いくらトゲを立て毒を吹く悪魚でも、漁夫はそれを掴むのに何のためらいもしていないようにである。

「かッ……こ、この」

「ちく、ちくしょうっ」

ふたりは、しきりと刃ものを振ったが、介三郎の足にも腰にも触れることはできなかった。介三郎は、そのままぐんぐんと歩き、

「やめろっ、やめろっ、喧嘩はやめいっ。――この縄内からみな外へ出ろ。出ないやつはみなごろしにいたすぞ。この霊所を守る建碑の奉行、佐々介三郎が承知せぬぞっ」

と、声をからして鎮めた。

大げさにいえば梵鐘のなりわたるにも似ていた。その大声にはさしもの野良犬も敵味方をとわず一度はびくとしたようだったが、すぐもとの噛みあいがつづいて、水をかけてもやみそうでなかった。

「やめぬかっ。