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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页
四
「どうなさるおつもりです、佐々さん」
「いま、土地の役所へ、使いをやりましたから、検視が来るでしょう」
「きついご迷惑がかかるかも知れませんな、死人もございましょう」
「四人ばかりは助かりそうもない」
介三郎は、小屋のうちをふり顧って、そこに枕をならべている怪我人どものうめきにちょっと眉をひそめた。
「――が、ご心配には及びません。いい開きはそれがしが十分いたしますゆえ」
「黒白は分りきっていますが、何分にも、土地の役人のうちには、顔役などと、かなり親しいものもいないではありませんから」
そうこうしているうちに、為と四、五人の職人がもどって来た。介三郎は人々を手伝わせて、怪我人たちの手当にかかった。
浅傷のものは逃げているので、残ったものには重傷が多い。
介三郎や石権や勘太などが、その傷負いをひとりひとり抱き起して、傷口を洗ってやったり、ぼろきれで仮の繃帯をほどこしてやっても、かれらはまだ狼のように、ともすれば噛みつきそうな顔をしていた。
「……み、みやがれ」
「忌々しいなあ」
と、うめきと共に、声に出していう者もある。
そのなかに花隈の熊も、片腕を斬られてころがっていた。