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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页

青空文庫

――旦那あ、旦那アあ。

と、追いかけて来た。

そして、荷持をさせてくれというので、断ると、では兵庫とやら碑をお建てになる場所で、土かつぎでも、職人の手つだいでも、なんでもいいから使ってくれと強っていう。

つい不愍をかけたのは自分のほうからである。振切るのも、あわれと思って、そこから荷持として伴い、以来、住吉の石権へたのんで、手伝い人夫に使ってきた勘太であった。

勘太は実によく働いた。

ほかの人夫や職人とちがって、酒ものまないし、夜遊びにも出ない。だから仲間には、

――吝ッたれ。

と、蔑まれてもいるが、仕事場では、ひとの嫌がることもすすんでやるので、ほかの日傭いは解雇しても、勘太だけは建碑の終るまではいてくれるようにと、いまでは石権が手放さないものになっていた。

いまも小屋の蔭に。

その勘太はぼんやり立っていた。彼としては、介三郎が石権にはなすのを熱心に聞き入っているつもりだったが、ほかの職人たちの眼から見ると、いかにも、いるところを離れて、うつけているように見えるのである。

「やあい、もや助。水でも汲んで来い、河原へ行って」

草のなかで、煙草休みをしている職人たちの屯が、こっちを見て、大声でどなった。