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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页

青空文庫

つみ重ねてきた半生の悪行を怖れずにいられなかった。

「……だが、まだおれは三十まえ、あとの半生で、とり返しのつかないこともなかろう。……ああ、そういう気になってから、おれの人相も、自分の欲目か、すこし善くなって来たような気がする」

じっと、桶の水まで澄んでいた。勘太は、水桶のなかに映っている自分の顔に見恍れていた。もう一つの桶のなかには、秋空の雲が浮いていた。

「やーい何を見ているんだようっ。もや助え、鯰でも踏んだのかあ」

河原のむこうで、大声がしたので、あわてて水を上がってみると、仲間の為が、大土瓶と何か食べ物を提げて歩いている。

「為吉さんか。どこへ行きなすった」

「広厳寺へ、渋茶をもらいによ。――きょうは和尚がいたからそいってやった」

「なんて?」

「碑ができるために、黄門様から白米やら白銀やら、何かとご寄進もあるんだろうから、たまにはおれたちにも、供養をしてもよかろうぜって」

「あははは。なんていったね」

「蕎麦でも打たせて置こうから、晩にみなで来るがよい。貰うた新酒もあるほどに――と、お世辞をいった」

「お世辞じゃ何もなるまい」

「なに、かたい約束をしてきたのさ。