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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页

青空文庫

終って、各が順に、御榊をささげる。神酒をいただく。

「お礼申します。土地の方々、職方一同、おかげで目出度う出来た。ひとえに神助、また、みんなのおかげだ。かさねて、お礼をいう」

その日、佐々介三郎は、つねとは違って、新しい旅支度でここへ来ていた。祭がすむとともに、ここからすぐ水戸の西山荘へ帰るべく、一切の準備をすましていたのである。

かれが、改まって、そう挨拶をしたので、はや出立かと、

「もうお別れでございますか」

「まことに、お名残り惜しいことで」

などと交に、かれの前には、別辞をのべる者が立った。

「旦那、ちょっとお待ち下さい。――いつぞや頂戴した酒代で、実はきょう、みんなと相談の上、蜜柑と切餅を買って来ました。碑のできた慶びと、祭の祝いに、見物に来た女子供に、それを撒いてやろうと思いますが」

花隈の熊と、その子分がいった。

八百屋籠にはいった蜜柑、空箱に入れた切餅などが、そこに山と積まれた。介三郎は、かれらの性根から、きょうの麗らかな春の日にも勝るような光がさしているのを見た。

「やあ、ありがとう。では、わしも撒いて行こうか」

「みなさんも手伝っておくんなさい」