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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页
「よろしい」
「心得た」
広厳寺の和尚も、浮田甚兵衛や牟礼大八も、みな蜜柑や餅をかかえて、
「まつりじゃ、まつりじゃ。よろこべ、ことほげ」
「碑のまつり、人のまつり、世間のまつり、天地のまつり」
ばらばらと、陽にかがやいて蜜柑は降る、切餅はぶつかってくる。
女子供も、年よりたちも、旅人も百姓も、嬉々として、蜜柑を追い、餅と戯れた。
それがすむと、花隈や生田の子分たちは、牟礼、浮田のふたりに従って、街道のほうへ歩いて行った。
そして、介三郎へ向い、
「きょう限り、旦那ともお別れですが、こんど何処かでお目にかかるときは、きっと、生れ甦った人間となっていることを、かたくお約束しておきます。――ここにある者、ひとりのこらずお約束いたします。もしまちがったら、見当り次第、お斬り捨て下すってもお怨みはしません」
ということを、餞別のことばとして、一同見送った。
「お国許へ、何よりのみやげだな」
介三郎は、連れの勘太をかえりみてそういった。幾たびも、振返った。湊川の白いながれも自分を見送っているかと思われた。
巷
一
佐々介三郎が江戸へ寄ったのは、もう二月にはいっていた。兵庫からこう日数のかかるわけもないが、途中何かと公私の用を果して来たからである。