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さんごくし
三国志(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《三国志(五)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。
N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 頁
六
後堂へ請じて、また佳肴芳盞をならべた。後堂の客は、家庭の客である。下へもおかないもてなしとはこの事だった。
だいぶ酩酊して、
「もう帰る」と、趙子龍が云い出した頃である。まあまあと引き止めているところへ、ぷーんと異薫が流れて来た。
「おや?」と、趙子龍が振り向いてみると、雪のような素絹をまとった美人が楚々と入ってきて、
「お呼び遊ばしましたか」と、趙範へいった。
趙範はうなずいて、
「ああ。こちらは、子龍将軍でいらっしゃる。しかもわが家と同じ趙姓だ。おちかづきをねがって、何かとおもてなしするがいい」と、席へ倚らせた。
趙子龍は改まって、
「こちらはどなたですか」
と、その美貌に、眼を醒ましたように、趙範をかえりみて訊ねた。
六
「私の嫂です」
と、趙範はにやにや紹介した。
すると、趙子龍は、容をあらためて、ことばも丁寧に、
「それは知らなかった。召使いと思うて、つい」と、失礼を詫びた。
趙範は、傍らからその美人へ向って、お酌をせいとか、そこの隣りへ坐れとか、しきりに世話を焼きだしたが、趙子龍が、「無用、無用」と、疫病神でも払うように手を振ってばかりいるので、せっかくの美人もつまらなそうに、立ち去ってしまった。