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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(五)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 頁

青空文庫

駒に乗って、本陣を去ると、玄徳は、関羽以下二十余人の従者を具して、飛ぶが如く、江岸まで急いできた。

――と、水辺の楊柳の蔭から手をあげて、

「ご主君、おつつがもなく、お帰りでしたか」と、呼ぶ人がある。

見れば、懐かしや、孔明ではないか。玄徳は駒の背から飛び降りて、

「おお、孔明か」と、駈け寄り、相抱いて、互いの無事をよろこんだ。

孔明は、その歓びを止めて、

「私の身はいま、その象においては、虎口の危うき中にいますが、しかし安きこと泰山の如しです。決してご心配くださいますな。――むしろこの先とも、お大事を期していただきたいのは、わが君の行動です。来る十一月の二十日は、まさしく甲子にあたります。お忘れなく、その日は、ご麾下趙雲に命じて、軽舸を出し、江の南岸にあって、私を待つようにお備えください。いまは帰らずとも、孔明は必ず東南の風の吹き起る日には帰ります」

「先生、どうして今から、東南の風の吹く日が分りますか」

「十年、隆中の岡に住んでいた間は、毎年のように、春去り、夏を迎え、秋を送り、冬を待ち、長江の水と空ゆく雲をながめ、朝夕の風を測って暮していたようなものですから、それくらいな観測は、ほぼはずれない程度の予見はつきます。