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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(五)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 頁

青空文庫

「仰せのまま、それがしはかく認めましたが、もし軍師のおことばと違い、曹操が華容道へ逃げてこなかったら、その場合、軍師ご自身は、何と召されるか」と、言質を求めた。

孔明は、微笑して、

「曹操がもし華容道へ落ちずに、べつな道へ遁れたときは、自分も必ず罪をこうむるであろう」

と、約した。

そして、なお、

「足下は、華容山の裡にひそみ、峠のほうには、火をつけ、柴を焼かせ、わざと煙をあげて、曹操の退路に伏せておられよ。曹操が死命を制し得んこと必定であろう」と、命じた。

「おことばですが」と、関羽は、その言をさえぎって、

「峠に火煙をあげなば、せっかく、落ちのびて来た曹操も、道に敵あることを覚り、ほかへ方角を変えて逃げ失せはいたすまいか」

「否々」

孔明は、わらって、

「兵法に、表裏と虚実あり、曹操は元来、虚実の論にくわしき者。彼、行くての山道に煙のあがるを見なば、これ、敵が人あるごとき態を見せかくるの偽計なりと観破し、あえて、冒し来るに相違ない。敵を謀るにはよろしく敵の智能の度を測るをもって先とす――とはこのこと。あやしむなかれ。羽将軍、疾くゆき給え」

「なるほど」

関羽は、嘆服して、退くと、養子の関平、腹心の周倉などを伴って、手勢五百余騎をひきい、まっしぐらに華容道へ馳せ向った。