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さんごくし

三国志(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(五)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 頁

青空文庫

そのあとで玄徳は、かえって、孔明よりも、心配顔していた。

「いったい、関羽という人間は、情けに篤く義に富むこと、人一倍な性質であるからは、ああはいって差向けたものの、その期に臨んで、曹操を助けるような処置に出ないとは限らない。……ああ、やはり軍師のお考え通り、留守を命じておいたほうが無事だったかもしれない」

孔明は、その言を否定して、

「あながち、それが良策ともいえません。むしろ関羽を差向けたほうが、自然にかなっておりましょう」と、いった。

玄徳が、不審顔をすると、理を説いて、こうつけ加えた。

「なぜならば――です。私が天文を観じ人命を相するに、この度の大戦に、曹操の隆運とその軍力の滅散するは必定でありますが、なおまだ、曹操個人の命数はここで絶息するとは思われません。彼にはなお天寿がある。――ゆえに、関羽の心根に、むかし受けた曹操の恩に対して、今もまだ報じたい情があるなら、その人情を尽くさせてやるもよいではありませんか」

「先生。……いや軍師。あなたはそこまで洞察して、関羽をつかわしたのですか」

「およそ、それくらいなことが分らなければ、兵を用いて、その要所に適材を配することはできません」