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さんごくし
三国志(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《三国志(五)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。
N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 325,249 字 · 653 頁
いわんや軍師の座にあって、謹厳おのれを持していやしくもせず、日頃はあまり大きな声すら出さない孔明が、断乎、斬れ! と命じたのであるから、人々みな慄然とすくみ立って、どうなることかと思っていた。
「軍師――」と、急に彼のまえに迫って、膝を曲げないばかりに愍れみを仰いだのは、当の関羽ではなくて、玄徳であった。
「わしと、関羽とは、むかし桃園に義を結んで、生死を倶にせんと誓ってある。いわば関羽の死はわしの死を意味する。きょうの罪は赦しがたいものに違いないが、わしに免じて――いやわしにその罪科をしばし預けてくれい。後日、かならずこの罪を償うほどの大功を挙げさせるから。……軍師、大法を歪曲するのではなく、仮にしばらくその法断を待って欲しいのじゃ。たのむ」
身、主君たる位置にありながら、玄徳は、臣下の一命のために、臣下に対して、ひれ伏さないばかりであった。
何でそれまでを、孔明とて一蹴できよう。彼はわずかに面をそむけて、
「赦すことはできません。軍紀はあくまで厳然たる軍紀ですが、思し召のまま暫時、処断は猶予しましょう。関羽の罪は、おあずけしておきます」
と遂にいった。