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ばいりせんせいぎょうじょうき
梅里先生行状記
吉川 英治
「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页
五
それはともかく。
勘太もまた、いまの人間だし、百姓ということばをやはり侮蔑の意味にうけ取ったことはまちがいなく、重ね重ねの堪忍も、ついにやぶれて、
「百姓がどうしたと?」
いうやいな、あいてが自分を撲ったとおりに、あいての横顔をはたきつけた。
与えた打撃の度は、もちろん勘太の手のほうが強かった。さきの十倍もある力で返した。
五
撲り返したとたんに勘太は後悔していた。
そのときかれの頭にはまだ十分な反省があったのである。だからすぐ次には、逃げだそうとしたものを、
「やったな」
と、あいての男は、よろめいた身を翻して、勘太のうしろに組みついた。
ほとんど自覚なく勘太は身をすこし沈めてあいての者を肩ごしに投げつけていた。
もういちど、その男は、
「やりやがったな」
と、顔じゅうを、火にして起ちかけたところを、
「見損なうな」
と、勘太も一酬して、かれのわめく顔を、草履で踏んづけた。
「みんな、来てくれえっ。この野郎を、たたんでくれっ」
必死に、勘太の足にしがみつきながら、大声でたれかを呼びはじめたので、勘太も逃げようと努めたが、離せばこそである。
「ええい、面倒くせえ」