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ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页

青空文庫

四

と、いうことであった。

又四郎に否やのあるはずはない――と、会うまえから、信じきっていた介三郎は、かれの一言に茫然とした。

(いやだ。そんな無謀は)

膠もない。素ッ気もない。

それからの論争なのである。

かつては、又四郎の行為を、粗暴といい、無謀とわらった介三郎が、位置をかえて、又四郎からたしなめられた。

(行ってみない前なら知らぬこと。血気の赴くままを行ってみて、その結果を眼に見、その浅薄を慚愧している自分には、生憎ながら、もう熱情が乏しい。雷同はご免こうむる)

四

良人と客のけわしい対座のあいだへ、やがて、お次は怖々すり寄って行った。

そして杯を洗い、

「佐々さま。いかがでございますか。何もございませぬが、まずおひとつ」

と、すすめ、良人の又四郎へも、

「ちと、冷えましたが、お酒をあたためるまで、あなたも、すこしお客さまへ、おすすめして上げてくださいませ」

と、双方を程よくなだめた。

介三郎は、快くのみほして、

「お内儀、とんだ客で驚かれたであろう。この客は、あなたの良人へ、生命をすてろと、すすめに来たのだが、なぜか、又四郎はいやだという。……考えればむりはない、あなたのような美しい新妻を持っては」