轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ばいりせんせいぎょうじょうき

梅里先生行状記

吉川 英治

「朝日新聞」1941(昭和16)年2月18日~8月24日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 209,260 字 · 418 页

青空文庫

空谷子

一

空谷子

一

奥まった方丈の一室を閉めきって、住職はその日はいとど細心に、誰が来ても留守と断らせ、ただひとりの客、人見又四郎と会っていた。

「恐らく今日が、こうしてお会いする最後でしょう」

と、又四郎はいった。

住職もまた、その語をあえていぶかりもしない。惜別の情はありあり面に示していたが、ぜひもなげに、

「ご一心をつらぬかれるよう蔭ながらお祈りしている」

と、いったのみである。

後に思い合せると、ここの住職は、又四郎の父卜幽の門下だった経歴があるし、又四郎の母方の実家ともかなり親しい関係があった。

父の門人として信頼のおける点からも、又四郎はその抱懐をこの老僧には打明けていたらしい。

もちろん、去年、この寺にしばらくいて、後に、藤井家へ小間使として入った小枝という女性は、寺の縁故でも何でもない。銀河の夜から見えなくなった魚松のむすめ、あのお次だったのである。

筆まめな女文字の便りは、この寺へも来、又四郎の手許へも、いろいろな方便をもって、たえず届いていた。

彼は藤井紋太夫と柳沢吉保との関係について、確証を得た。また、紋太夫が自藩の内部にたいして、何を策しているか、はっきり知ることができた。