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しぶえちゅうさい
渋江抽斎
「大阪毎日新聞」「東京日日新聞」1916(大正5)年1月13日~5月17日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 166,525 字 · 334 页
その七
外崎さんも事の奇なるに驚いていった。「抽斎の子なら、わたくしは識っています。」
「そうですか。長唄のお師匠さんだそうですね。」
「いいえ。それは知りません。わたくしの知っているのは抽斎の跡を継いだ子で、保という人です。」
「はあ。それでは渋江保という人が、抽斎の嗣子であったのですか。今保さんは何処に住んでいますか。」
「さあ。大ぶ久しく逢いませんから、ちょっと住所がわかりかねます。しかし同郷人の中には知っているものがありましょうから、近日聞き合せて上げましょう。」
その七
わたくしは直に保さんの住所を討ねることを外崎さんに頼んだ。保という名は、わたくしは始めて聞いたのではない。これより先、弘前から来た書状の中に、こういうことを報じて来たのがあった。津軽家に仕えた渋江氏の当主は渋江保である。保は広島の師範学校の教員になっているというのであった。わたくしは職員録を検した。しかし渋江保の名は見えない。それから広島高等師範学校長幣原坦さんに書を遣って問うた。しかし学校にはこの名の人はいない。またかつていたこともなかったらしい。わたくしは多くの人に渋江保の名を挙げて問うて見た。