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しぶえちゅうさい
渋江抽斎
「大阪毎日新聞」「東京日日新聞」1916(大正5)年1月13日~5月17日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 166,525 字 · 334 页
その六十五
雷が鳴り出すと、蚊の中に坐して酒を呼ぶことにしていたそうである。
抽斎のこの弱点は偶森枳園がこれを同じうしていた。枳園の寿蔵碑の後に門人青山道醇らの書した文に、「夏月畏雷震、発声之前必先知之」といってある。枳園には今一つ厭なものがあった。それは蛞蝓であった。夜行くのに、道に蛞蝓がいると、闇中においてこれを知った。門人の随い行くものが、燈火を以て照し見て驚くことがあったそうである。これも同じ文に見えている。
その六十五
抽斎は平姓で、小字を恒吉といった。人と成った後の名は全善、字は道純、また子良である。そして道純を以て通称とした。その号抽斎の抽字は、本※に作った。※、※、抽の三字は皆相通ずるのである。抽斎の手沢本には※斎校正の篆印が殆ど必ず捺してある。
別号には観柳書屋、柳原書屋、三亦堂、目耕肘書斎、今未是翁、不求甚解翁等がある。その三世劇神仙と称したことは、既にいったとおりである。
抽斎はかつて自ら法諡を撰んだ。容安院不求甚解居士というのである。この字面は妙ならずとはいいがたいが、余りに抽象的である。これに反して抽斎が妻五百のために撰んだ法諡は妙極まっている。