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しぶえちゅうさい

渋江抽斎

森 鴎外

「大阪毎日新聞」「東京日日新聞」1916(大正5)年1月13日~5月17日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 166,525 字 · 334 页

青空文庫

その五十六

宝永元年から天明五年に至る最古の一冊は題号がなく、引用書として『津軽一統志』、『津軽軍記』、『津陽開記』、『御系図三通』、『歴年亀鑑』、『孝公行実』、『常福寺由緒書』、『津梁院過去帳抄』、『伝聞雑録』、『東藩名数』、『高岡霊験記』、『諸書案文』、『藩翰譜』が挙げてある。これは諸書について、主に弘前医官に関する事を抄出したものであろう。

『四つの海』は抽斎の作った謡物の長唄である。これは書と称すべきものではないが、前に挙げた『護痘要法』と倶に、江戸時代に刊行せられた二、三葉の綴文である。

『仮面の由来』、これもまた片々たる小冊子である。

その五十六

『呂后千夫』は抽斎の作った小説である。庚寅の元旦に書いたという自序があったそうであるから、その前年に成ったもので、即ち文政十二年二十五歳の時の作であろう。この小説は五百が来り嫁した頃には、まだ渋江の家にあって、五百は数遍読過したそうである。或時それを筑山左衛門というものが借りて往った。筑山は下野国足利の名主だということであった。そして終に還さずにしまった。以上は国文で書いたものである。

この著述の中刊行せられたものは『経籍訪古志』