轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しぶえちゅうさい

渋江抽斎

森 鴎外

「大阪毎日新聞」「東京日日新聞」1916(大正5)年1月13日~5月17日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 166,525 字 · 334 页

青空文庫

しかし本所においての出来事で、多分安政三年の頃であったらしいということである。

或日手島良助というものが抽斎に一の秘事を語った。それは江戸にある某貴人の窮迫の事であった。貴人は八百両の金がないために、まさに苦境に陥らんとしておられる。手島はこれを調達せんと欲して奔走しているが、これを獲る道がないというのであった。抽斎はこれを聞いて慨然として献金を思い立った。抽斎は自家の窮乏を口実として、八百両を先取することの出来る無尽講を催した。そして親戚故旧を会して金を醵出せしめた。

無尽講の夜、客が已に散じた後、五百は沐浴していた。明朝金を貴人の許に齎さんがためである。この金を上る日は予め手島をして貴人に稟さしめて置いたのである。

抽斎は忽ち剥啄の声を聞いた。仲間が誰何すると、某貴人の使だといった。抽斎は引見した。来たのは三人の侍である。内密に旨を伝えたいから、人払をしてもらいたいという。抽斎は三人を奥の四畳半に延いた。三人の言う所によれば、貴人は明朝を待たずして金を獲ようとして、この使を発したということである。

抽斎は応ぜなかった。この秘事に与っている手島は、貴人の許にあって職を奉じている。