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しぶえちゅうさい
渋江抽斎
「大阪毎日新聞」「東京日日新聞」1916(大正5)年1月13日~5月17日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 166,525 字 · 334 页
覚音寺は五百の里方山内氏の菩提所である。帰途二人は蔵前通を歩いて桃太郎団子の店の前に来ると、五百の相識の女に邂逅した。これは五百と同じく藤堂家に仕えて、中老になっていた人である。五百は久しく消息の絶えていたこの女と話がしたいといって、ほど近い横町にある料理屋誰袖に案内した。成善も跡に附いて往った。誰袖は当時川長、青柳、大七などと並称せられた家である。
三人の通った座敷の隣に大一座の客があるらしかった。しかし声高く語り合うこともなく、矧てや絃歌の響などは起らなかった。暫くあってその座敷が遽に騒がしく、多人数の足音がして、跡はまたひっそりとした。
給仕に来た女中に五百が問うと、女中はいった。「あれは札差の檀那衆が悪作劇をしてお出なすったところへ、お辰さんが飛び込んでお出なすったのでございます。蒔き散らしてあったお金をそのままにして置いて、檀那衆がお逃なさると、お辰さんはそれを持ってお帰なさいました」といった。お辰というのは、後盗をして捕えられた旗本青木弥太郎の妾である。
女中の語り畢る時、両刀を帯びた異様の男が五百らの座敷に闖入して「手前たちも博奕の仲間だろう、金を持っているなら、そこへ出してしまえ」