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しぶえちゅうさい

渋江抽斎

森 鴎外

「大阪毎日新聞」「東京日日新聞」1916(大正5)年1月13日~5月17日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 166,525 字 · 334 页

青空文庫

それを決するには、どれだけの種類の書を「武鑑」の中に数えるかという、「武鑑」のデフィニションを極めて掛からなくてはならない。

それにはわたくしは『足利武鑑』、『織田武鑑』、『豊臣武鑑』というような、後の人のレコンストリュクションによって作られた書を最初に除く。次に『群書類従』にあるような分限帳の類を除く。そうすると跡に、時代の古いものでは、「御馬印揃」、「御紋尽」、「御屋敷附」の類が残って、それがやや形を整えた「江戸鑑」となり、「江戸鑑」は直ちに後のいわゆる「武鑑」に接続するのである。

わたくしは現に蒐集中であるから、わたくしの「武鑑」に対する知識は日々変って行く。しかし今知っている限を言えば、馬印揃や紋尽は寛永中からあったが、当時のものは今存じていない。その存じているのは後に改板したものである。ただ一つここに姑く問題外として置きたいものがある。それは沼田頼輔さんが最古の「武鑑」として報告した、鎌田氏の『治代普顕記』中の記載である。沼田さんは西洋で特殊な史料として研究せられているエラルヂックを、我国に興そうとしているものと見えて、紋章を研究している。