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しぶえちゅうさい
渋江抽斎
「大阪毎日新聞」「東京日日新聞」1916(大正5)年1月13日~5月17日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 166,525 字 · 334 页
相方は山口巴の司という女であった。五百が屋敷から下る二年前に、栄次郎は深入をして、とうとう司の身受をするということになったことがある。忠兵衛はこれを聞き知って、勘当しようとした。しかし救解のために五百が屋敷から来たので、沙汰罷になった。
然るに五百が藤堂家を辞して帰った時、この問題が再燃していた。
栄次郎は妹の力に憑って勘当を免れ、暫く謹慎して大門を潜らずにいた。その隙に司を田舎大尽が受け出した。栄次郎は鬱症になった。忠兵衛は心弱くも、人に栄次郎を吉原へ連れて往かせた。この時司の禿であった娘が、浜照という名で、来月突出になることになっていた。栄次郎は浜照の客になって、前よりも盛な遊をしはじめた。忠兵衛はまた勘当すると言い出したが、これと同時に病気になった。栄次郎もさすがに驚いて、暫く吉原へ往かずにいた。これが五百の帰った時の現状である。
この時に当って、まさに覆らんとする日野屋の世帯を支持して行こうというものが、新に屋敷奉公を棄てて帰った五百の外になかったことは、想像するに難くはあるまい。姉安は柔和に過ぎて決断なく、その夫宗右衛門は早世した兄の家業を襲いでから、酒を飲んで遊んでいて、自分の産を治することをさえ忘れていたのである。