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しぶえちゅうさい
渋江抽斎
「大阪毎日新聞」「東京日日新聞」1916(大正5)年1月13日~5月17日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 166,525 字 · 334 页
そしてもし渋江道純の跡がどうなっているか知らぬかと問われて答えた。「道純さんの娘さんが本所松井町の杵屋勝久さんでございます。」
『経籍訪古志』の著者渋江道純の子が現存しているということを、わたくしはこの時始めて知った。しかし杵屋といえば長唄のお師匠さんであろう。それを本所に訪ねて、「お父うさんに抽斎という別号がありましたか」とか、「お父うさんは「武鑑」を集めてお出でしたか」とかいうのは、余りに唐突ではあるまいかと、わたくしは懸念した。
わたくしは杵屋さんに男の親戚がありはせぬか、問い合わせてもらうことを飯田さんに頼んだ。飯田さんはそれをも快く諾した。わたくしは探索の一歩を進めたのを喜んで、西江戸川町の邸を辞した。
二、三日立って飯田さんの手紙が来た。杵屋さんには渋江終吉という甥があって、下渋谷に住んでいるというのである。杵屋さんの甥といえば、道純から見れば、孫でなくてはならない。そうして見れば、道純には娘があり孫があって現存しているのである。
わたくしは直に終吉さんに手紙を出して、何時何処へ往ったら逢われようかと問うた。返事は直に来た。今風邪で寝ているが、なおったらこっちから往っても好いというのである。