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しぶえちゅうさい
渋江抽斎
「大阪毎日新聞」「東京日日新聞」1916(大正5)年1月13日~5月17日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 166,525 字 · 334 页
角兵衛獅子が門に至れば、抽斎が必ず出て看たことは、既に言った。
庭園は抽斎の愛する所で、自ら剪刀を把って植木の苅込をした。木の中では御柳を好んだ。即ち『爾雅』に載せてあるである。雨師、三春柳などともいう。これは早く父允成の愛していた木で、抽斎は居を移すにも、遺愛の御柳だけは常におる室に近い地に栽え替えさせた。おる所を観柳書屋と名づけた柳字も、楊柳ではない、※(「木+蟶のつくり」、第3水準1-86-19)柳である。これに反して柳原書屋の名は、お玉が池の家が柳原に近かったから命じたのであろう。
抽斎は晩年に最も雷を嫌った。これは二度まで落雷に遭ったからであろう。一度は新に娶った五百と道を行く時の事であった。陰った日の空が二人の頭上において裂け、そこから一道の火が地上に降ったと思うと、忽ち耳を貫く音がして、二人は地に僵れた。一度は躋寿館の講師の詰所に休んでいる時の事であった。詰所に近い厠の前の庭へ落雷した。この時厠に立って小便をしていた伊沢柏軒は、前へ倒れて、門歯二枚を朝顔に打ち附けて折った。此の如くに反覆して雷火に脅されたので、抽斎は雷声を悪むに至ったのであろう。