轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しぶえちゅうさい

渋江抽斎

森 鴎外

「大阪毎日新聞」「東京日日新聞」1916(大正5)年1月13日~5月17日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 166,525 字 · 334 页

青空文庫

といって、頭を委せていたので馴れた。結うことはお牧婆あやの髪を、前髪に張のない、小さい祖母子に結ったのが手始で、後には母の髪、妹の髪、女中たちの髪までも結い、我髪は固より自ら結った。唯余所行の我髪だけ母の手を煩わした。弘前に徙った時、浅越玄隆、前田善二郎の妻、松本甲子蔵の妹などは菓子折を持って来て、陸に髪を結ってもらった。陸は礼物を却けて結って遣り、流行の飾をさえ贈った。

陸は生得おとなしい子で、泣かず怒らず、饒舌することもなかった。しかし言動が快活なので、剽軽者として家人にも他人にも喜ばれたそうである。その人と成った後に、志操が堅固で、義務心に富んでいることは、長唄の師匠としての経歴に徴して知ることが出来る。

牛込の保さんの家と、その保さんを、父抽斎の継嗣たる故を以て、始終「兄いさん」と呼んでいる本所の勝久さんの家との外に、現に東京には第三の渋江氏がある。即ち下渋谷の渋江氏である。

下渋谷の家は脩の子終吉さんを当主としている。終吉は図案家で、大正三年に津田青楓さんの門人になった。大正五年に二十八歳である。終吉には二人の弟がある。前年に明治薬学校の業を終えた忠三さんが二十一歳、末男さんが十五歳である。