轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しぶえちゅうさい

渋江抽斎

森 鴎外

「大阪毎日新聞」「東京日日新聞」1916(大正5)年1月13日~5月17日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 166,525 字 · 334 页

青空文庫

引き続いて二月に、森枳園の家に奇怪な事件が生じた。枳園は阿部家を逐われて、祖母、母、妻勝、生れて三歳の倅養真の四人を伴って夜逃をしたのである。後に枳園の自ら選んだ寿蔵碑には「有故失禄」と書してあるが、その故は何かというと、実に悲惨でもあり、また滑稽でもあった。

枳園は好劇家であった。単に好劇というだけなら、抽斎も同じ事である。しかし抽斎は俳優の技を、観棚から望み見て楽むに過ぎない。枳園は自らその科白を学んだ。科白を学んで足らず、遂に舞台に登って※子を撃った。後にはいわゆる相中の間に混じて、並大名などに扮し、また注進などの役をも勤めた。

或日阿部家の女中が宿に下って芝居を看に往くと、ふと登場している俳優の一人が養竹さんに似ているのに気が附いた。そう思って、と見こう見するうちに、女中はそれが養竹さんに相違ないと極めた。そして邸に帰ってから、これを傍輩に語った。固より一の可笑しい事として語ったので、初より枳園に危害を及ぼそうとは思わなかったのである。

さてこの奇談が阿部邸の奥表に伝播して見ると、上役はこれを棄て置かれぬ事と認めた。そこでいよいよ君侯に稟して禄を褫うということになってしまった。