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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(三)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 頁

青空文庫

三

「太史慈、待てっ」

と、闇が吼える。――声ある烈風が追ってくる。十里、二十里、奔っても奔っても追ってくる。

この地方には沼、湖水、小さな水溜りなどが非常に多い。長江のながれが蕪湖に入り、蕪湖の水がまた、曠野の無数の窪にわかれているのだった。

その湖沼や野にはまた、蕭々たる蘆や葭が一面に生い茂っていた。――ために、彼は幾たびか道を見失った。

「――しまッた!」

ついに、彼の駒は、沼の泥土へ脚を突っこんで、彼の体は、蘆のなかへほうり出されていた。

すると、四方の蘆のあいだから、たちまち熊手が伸びた。

分銅だの鈎のついた鎖だのが、彼の体へからみついた。

「無念っ」

太史慈は、生擒られた。

高手小手に縛められて、孫策の本陣へとひかれてゆく途中も、彼は何度も雲の迅い空を仰いで、

「残念だっ」と、眦に悲涙をたたえた。

三

やがて彼は、孫策の本陣へ引かれて来た。

「万事休す」と観念した彼は、従容と首の座について、瞑目していた。

すると誰か、「やあ、しばらく」と、帳をあげて現れた者が、友人でも迎えるように、馴々しくいった。

太史慈が、半眼をみひらいて、その人を見れば余人ならぬ敵の総帥孫策であった。