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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(三)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 頁

青空文庫

二

禰衡も、負けずにいう。

「臭いもの身知らずである。――丞相には、自分の汚濁がお分りにならないとみえる」

「なに。予を濁れるものというか」

「然り。――あなたは賢そうに構えているが、その眼はひとの賢愚をすら識別がつかない。眼の濁っている証拠である」

「……申したな。おのれ」

「また、詩書を読んで心を浄化することも知らない。語は心を吐くという。あなたの口の濁っているのは、高潔な修養をしていない証拠だ」

「……うウむ」

「ひとの忠言を聞かない、これを耳の濁りという。古今に通ぜぬくせに、我意ばかり猛々しい。これを情操の濁りと申す。日々坐臥の行状は、一として潔かなるなく、一として放恣ならざるはない。これ肉体の濁りである」

「…………」

「さらに、その諸濁の心は、誰ひとり頭の抑え手もないままに、いつとなく思いあがって、遂には、反逆の心芽を育て、行く行くは、身みずからの荊棘を作るにいたる。――愚かしきかな。笑うべき哉」

「…………」

「われ禰衡は、天下の名士であるものを、おん身は、礼遇もしないばかりか、鼓を打たせて辱めようとされた。まことに小人の沙汰である。むかし陽貨が孔子をうらんで害を加えんとしたり、臧倉などという輩が孟子に向って唾を吐いたしぐさにも似ておる。