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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(三)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 頁

青空文庫

胡弓夫人

一

「この地を去る思い出に」

とばかり、呂布の兵を踏みやぶり、その部将の魏続、宋憲などに手痛い打撃を与えて、

「これで幾らか胸がすいた」と、先へ落ちて行った劉玄徳のあとを追い慕った。

時は、建安元年の冬だった。

国なく食なく、痩せた馬と、うらぶれた家の子郎党をひき連れた劉玄徳は、やがて許昌の都へたどり着いた。

曹操は、しかし決してそれに無情ではなかった。

「玄徳は、わが弟分である」

といって、迎うるに賓客の礼をとり、語るに上座を譲ってなぐさめた。

なお、酒宴をもうけて、張飛や関羽をもねぎらった。

玄徳は、恩を謝して、日の暮れがた相府を辞し、駅館へひきあげた。

すると、その後ろ姿を見送りながら、曹操の腹心、荀は、

「玄徳はさすがに噂にたがわぬ人物ですな」と、意味ありげに、独り言をもらした。

「むむ」とうなずいたのみで曹操が黙然としていると、荀※(「或」の「丿」に代えて「彡」、第3水準1-84-30)はその耳へ顔を寄せて、

「彼こそ将来怖るべき英雄です。今のうちに除いておかなければ、ゆく末、あなたにとっても、由々しい邪魔者となりはしませんか」と、暗に殺意を唆った。