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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(三)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 頁

青空文庫

四

「アレ。なにけ? ……」

「なんじゃろ?」

無智な飢民の眼には、悲しむべきこの実相も、なんの異変とも映らぬもののようだった。

戟の光を見ても、悍馬のいななきを聞いても、その眼や耳は、おどろきを失っていた。恐怖する知覚さえ喪失している飢民の群れだった。

――が、やがて。

李※(「にんべん+確のつくり」、第4水準2-1-76)、郭※(「さんずい+巳」、第3水準1-86-50)の大軍が、帝の御車を追って、後方から真っ黒に地をおおって来ると、どこへくぐってしまったものか、もう飢民の影も、鳥一羽も、野には見えなかった。

四

砂塵と悲鳴につつまれながら、帝の御車は辛くも十数里を奔って来られたが、ふと行く手の曠野に横たわる丘の一端から、たちまち、漠々たる馬煙が立昇って来るのが見えたので、

「や、や?」

「あの大軍は?」

「敵ではないか?」

「早……前にも敵か?」

と、扈従の宮人たちは、みなさわぎ立て、帝にも、愕然と眉をひそめられた。

進退ここにきわまるかと、御車に従う者たちが度を失って喚くので、皇后も泣き声を洩らさせ給い、帝も、御簾のうちから幾度となく、

「道を変えよ」と叫ばれた。