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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(三)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 頁

青空文庫

黒風白雨

一

その間に。

呂布につづく高順、張遼の軍勢も、またたくうち橋を渡って、城門内を埋めてしまい、楼台城閣は炎を吐き、小沛の小城は今や完全に、彼の蹂躪するところとなってしまった。

黒風白雨

一

今は施すすべもない。なにをかえりみているいとまもない。業火と叫喚と。

そして味方の混乱が、否応もなく、玄徳を城の西門から押し出していた。

火の粉と共に、われがちに、逃げ散る兵の眼には、主君の姿も見えないらしい。

玄徳も逃げた。

けれど、いつのまにか、彼はただ一騎となっていた。

小沛から遠く落ちて、ただの一騎となった身に、気がついた時、玄徳は、

「ああ、恥かしい」と思った。

もう一度、城へ戻って戦おうかと考えた。小沛の城には老母がいる、妻子が残してある。

「――何で、われ一人、このまま長らえて落ちのびられよう」

慚愧にとらわれて、しばし後ろの黒煙をふり向いていたが、

「いや待て。――ここで死ぬのが孝の最善か。妻子への大愛か。――呂布もみだりに老母や妻子を殺しもしまい。今もどって、いたずらに呂布を怒らすよりはむしろ呂布に完全な勝利を与えて、彼の心に寛大な情のわくのを祈っていたほうがよいかもしれぬ」