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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(三)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 頁

青空文庫

増長冠

一

韓暹の陣地は、下の山中と聞く。――道々、木の実を糧とし、羊の乳をのんで病躯を力づけ、山中の陣を訪れて、きっと韓暹を説きつけてみせます。ですから、あなたのほうでも、おぬかりなく、劉玄徳へ使いを立て、万端、お手配をしておかれますように」

陳大夫はその日、一頭の羊をひいて、城の南門から、飄然と出て行った。

増長冠

一

下は徐州から東方の山地で、寄手第六軍の大将韓暹は、ここから徐州へ通じる道を抑え、司令部を山中の嘯松寺において、総攻撃の日を待っている。

もちろん、街道の交通は止まっている。野にも部落にも兵が満ちていた。

――けれど陳大夫は平然と通って行った。

白い羊を引いて。

そして、疎髯を風になびかせながら行く。

「なんだろ、あの爺は」と、指さしても、咎める兵はなかった。

咎めるには、あまりに平和なすがたである。戦場のなかを歩いていながら少しも危険を意識していない。そういうものにはつい警戒の眼を怠る。

「もうほど近いな」

陳大夫は、山にかかると、時折、岩に腰かけた。この山には、清水がない。羊の乳を器にしぼって、わずかに渇と飢えをしのいだ。

時は、真夏である。

満山、蝉の声だった。