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さんごくし
三国志(三)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《三国志(三)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 頁
二
大列のすぎる後、汗は地をぬらし、草はほこりをかぶり、山道の岩砂は焼け切って、一滴の水だに見あたらない。兵は多く仆れた。
「水がのみたい」
「水はないか」
斃れた兵も呻く。なお、進む兵もいう。
すると、曹操が、突然、馬上から鞭をさして叫んだ。
「もうすこしだ! この山を越えると、梅の林がある。――疾く参って梅林の木陰に憩い、思うさま梅の実をとれ。――梅の実をたたき落して喰え」
聞くと、奄々と渇にくるしんでいた兵も、
「梅でもいい!」
「梅ばやしまで頑張れ」と、にわかに勇気づいた。
そして無意識のうちに、梅の酸い味を想像し、口中に唾をわかせて、渇を忘れてしまっていた。
――梅酸渇を医す。
曹操は、日頃の閑に、何かの書物で見ていたことを、臨機に用いたのであろうが、後世の兵学家は、それを曹操の兵法の一として、暑熱甲冑を焦く日ともなれば、渇を消す秘訣のことばとして、思い出したものである。
伏牛山脈をこえてくる黄塵は、早くも南陽の宛城から望まれた。
張繍は、うろたえた。
「はや、後詰したまえ」
と、荊州の劉表へ、援助をたのむ早打ちをたて、軍師の賈を城にとどめて、
「つかれ果てた敵の兵馬、大軍とて何ほどかあろう」