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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(三)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 頁

青空文庫

二

なにか、布陣図のようなものを囲んで謀議に鳩首しているところだった。

「ただ今、羽将軍が着陣されました」

うしろのほうで、卒の一名が高く告げた。

「なに、関羽が見えたか」

よほどうれしかったとみえる。曹操は諸将を打捨てて、自身、大股に迎えに出て行った。

関羽はいま営外に着いて、赤兎馬をつないでいた。曹操の出迎えに恐縮して、

「召しのお使いをうけたので、すぐ拝領のこれに乗って、快足を試してきました」

馬の鞍を叩きながら云った。

曹操はここ数日の惨敗を、ことばも飾らず彼に告げて、

「ともかく、戦場を一望してくれ給え」

と、卒に酒を持たせ、自身、先に立って山へ登った。

「なるほど」

関羽は、髯のうえに、腕をくんで、十方の野を見まわした。

野に満ち満ちている両軍の精兵は、まるで蕎麦殻をきれいに置いて、大地に陣形図を描いたように見える。

河北軍のほうは、易の算木をおいたような象。魚鱗の正攻陣を布いている。曹操の陣はずっと散らかって、鳥雲の陣をもって迎えていた。

その一角と一角とが、いまや入り乱れて、揉み合っていた。折々、喊声は天をふるわし、鎗刀の光は日にかがやいて白い。