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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(三)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 頁

青空文庫

秘勅を縫う

一

「もっともなことだ……」

玄徳は、うなずいた。幾たびも同感のうなずきを見せた。

「――だが関羽。ここは深慮すべき秋ではないか。鼠を殺すのに、手近な器物を投げつけるとする。鼠の価値と、器物の価値とを、考え合わす必要があろう。われら、義兄弟の生命は、そんな安価なものではない筈だ。もしあの折、かりにそちが目的を仕遂げたところで、彼には十万の兵と無数の大将がひかえている。われらも共に許田の土と化さねばなるまい。そしてまたまた大乱のうちから、次の曹操が現われたら何にもならないことになるではないか。――張飛なら知らぬこと、其方までがそんな短慮では困る。夢、ことばの端にも、そんな激色を現わしてはならぬ」

諄々と説かれて、関羽はかえすことばもなかった。

しかし彼は、独り星夜の外に出ると、長嗟して、天へ語った。

「今日、あの奸雄を刺さなければ、やがて明日の禍いとなるは必定だ。誓っていう! 天下の乱兆は、さらに、曹操が生きてゆくほど大になろう!」

秘勅を縫う

一

禁苑の禽は啼いても、帝はお笑いにならない。

簾前に花は咲いても、帝のお唇は憂いをとじて語ろうともせぬ。

きょうも終日、帝は、禁中のご座所に、物思わしく暮しておわした。