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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(三)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 頁

青空文庫

三

「分った。もういうな」

曹操は、自分の胸の火を、自分で消しまわるに苦しんでいるようだった。

人いちばい明晰な理念と、人いちばい烈しい感情とが、ここ数日、いかに彼を懊悩させたかは、他人の想像も及ばなかった。しかも彼の充血した眼は容易に冷静に返り得ないのである。その結果として、董承の一家一門、そのほか王子服、呉子蘭などの一党とその家族ら、あわせて七百余人は、都のちまたを引き廻されて、一日のうちにみな斬殺されてしまった。

三

董貴妃は深窓にあるうちから美人の誉れがあった。召されて、宮中に入り、帝の寵幸をたまわってから、やがて身は懐妊のよろこびを抱いていた。

彼女は董承の娘であった。

虫のしらせか、その日貴妃は、なんとなく落ち着かない。絶えず胸さわぎのようなものを覚えていた。

秘園の春は浅く、帳裡の瓶花はまだ紅唇もかたい。

「貴妃、すぐれない顔色だが、どこか悪いのではないか」

帝は、伏皇后を伴うて、共に彼女の後宮を見舞われた。

貴妃は、雲鬢重たげに、

「いいえ……」と、かすかに花顔を横に振っていう。

「なんですか、ふた晩つづいて、父の夢を見たものですから」

そう聞くと、帝も皇后も、ふと眉をくもらせた。