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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(三)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 頁

青空文庫

三国志

煩悩攻防戦

一

煩悩攻防戦

一

呂布は、櫓に現れて、

「われを呼ぶは何者か」と、わざと云った。

泗水の流れを隔てて、曹操の声は水にこだまして聞えてきた。

「君を呼ぶ者は君の好き敵である許都の丞相曹操だ。――しかし、君と我と、本来なんの仇があろう。予はただご辺が袁術と婚姻を結ぶと聞いて、攻め下ってきたまでである。なぜならば、袁術は皇帝を僭称して、天下をみだす叛逆の賊である。かくれもない天下の敵である」

「…………」

呂布は、沈黙していた。

河水をわたる風は白く、蕭々と鳴るは蘆荻、翩々とはためくは両陣の旌旗。――その間一すじの矢も飛ばなかった。

「予は信じる。君は正邪の見極めもつかないほど愚かな将軍ではないことを。――今もし戈を伏せて、この曹操に従うならば、予は予の命を賭しても、天子に奏して君の封土と名誉とを必ず確保しておみせしよう」

「…………」

「それに反し、この際、迷妄にとらわれて降らず、君の城郭もあえなく陥落する日となっては、もう何事も遅い、君の一族妻子も、一人として生くることは、不可能だろう。のみならず、百世の後まで、悪名を泗水に流すにきまっている。よくよく賢慮し給え」