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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(三)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 頁

青空文庫

三

曹操も立ちあがっていたからである。――が、曹操は、剣をつかんで雪崩れ行こうとする諸大将のまえに両手をひろげて、こう叫んでいた。

「ならん、誰が禰衡を殺せと命じたか。――予を偉大な匹夫といったのは、当らずといえども遠からずで、そう怒り立つ値打はない。しかも、この腐儒などは、鼠のごときもので、太陽、大地、大勢を知らず、町にいては屋根裏や床下でひとり小理窟をこね、誤って殿上に舞いこんでも、奇矯な動作しか知らない日陰の小動物だ。斬り殺したところでなんの益にもならん。それよりは予が、彼に命じることがある」

一同を制した後、曹操は、あらためて禰衡を舞台から呼びよせ、衣服を与えて、

「荊州の劉表と交わりがあるか」と、たずねた。

三

「むむ。劉表とは多年、交わりがあるが――」と、禰衡が鼻さきで答えると、

「しからば、予のために、すぐ荊州へ下って、使いをせい」という曹操の命であった。

いま彼の命令とあれば、宮中でも相府でも、行われないことはなかったが、禰衡は、首を横に振った。

「いやだ」

「なぜ、いやか」

「おおかた用向きは分っておるから、わしの任ではないと思うだけだ」

「予がまだ何もいわぬのに、使命は推察がつくというか」