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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(三)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 頁

青空文庫

三

ようやく、小舟に乗ったのは、帝と皇后のほかわずか十数人に過ぎなかった。それ以外の兵や、遅れた宮人たちも、黄河の水に跳びこんで、共に逃げ渡ろうと、水中から舷へ幾人もの手が必死にしがみついたが、

「駄目だ、駄目だ。そう乗っちゃあ、俺たちが助からねえ」

と、李楽は剣を抜いて、その指や手頸をバラバラ斬り離した。ために、舷をうつしぶきも赤かった。

三

ここまで帝にかしずいて来た宮人らも、あらかた舟に乗り遅れて殺されたり、また舷に取りすがった者も、情け容赦なく突き離されて、黄河の藻屑となってしまった。

帝は滂沱の御涙を頬にながして、

「あな、傷まし。朕、ふたたび祖廟に上る日には、必ず汝らの霊をも祭るであろう」

と、叫ばれた。

あまりの酷たらしさに皇后は、顔色もなくお在したが、舟がすすむにつれ、風浪も烈しく、いよいよ生ける心地もなかった。

ようやく、対岸に着いた時は、帝の御衣もびッしょり濡れていた。皇后は舟に暈われたのか、身うごきもなさらない。伏徳が背に負いまいらせてとぼとぼ歩きだした。

秋風は冷々と蘆荻に鳴る。曇天なので、人々の衣は、いとど乾かず、誰の唇も紫色していた。