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さんごくし
三国志(三)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《三国志(三)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 頁
胸襟をひらいて、ひとつ乾杯しよう」
と、ひとり飲みこんで杯を高くあげた。
しかし、挙がった手は、彼の手だけだった。
ここに至っては、紀霊も黙っていられない。席を蹴らんばかりな顔をして、
「冗談は止めたまえ」と、呂布へ正面を切った。
「なにが冗談だ」
「考えてもみられよ。それがしは君命をうけて、十万の兵を引率し、玄徳を生捕らずんば生還を期せずと、この戦場に来ておるのだ」
「分っておる」
「百姓町人の擲り合いかなんぞなら知らぬこと。そう簡単に、兵を引揚げられるものではない。それがしが戦をやめる日には玄徳を生捕るか、玄徳の首を戟につらぬいて、凱歌をあげる日でなければならん」
「…………」
玄徳は、黙然と聞いていたが、その後ろに立っていた関羽、張飛の双眼には、ありありと、烈火がたぎっていた。
――と思うまに、張飛は、玄徳のうしろから戛々と、大股に床踏み鳴らして、
「やい紀霊ッ。これへ出ろ。――黙っておれば、人もなげな広言。われわれ劉玄徳と誓う君臣は、兵力こそ少いが、汝ら如き蛆虫や、いなごとは実力がちがう。そのむかし、黄巾の蜂徒百万を、僅か数百人で蹴散らした俺たちを知らないか。