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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(三)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 頁

青空文庫

「知れたことを訊くな。あの胡弓を奏でている女をだ」

「……ところが、あいにくと、あの美女は、未亡人だそうです。張繍の叔父、張済が死んだので、この城へ引きとって張繍が世話をしているのだとか聞きました」

「未亡人でも構わん。おまえは口をきいたことがあるのだろう。これへ誘ってこい」

「奥郭の深園にいるお方、どうして、私などが近づけましょう。言葉を交わしたことなどありません」

「では――」と、曹操はいよいよ語気に熱をおびて、いいつけた。

「混の兵、五十人を率いて、曹操の命なりと告げて、中門を通り、張済の後家に、糺すことあれば、すぐ参れと、伴ってこい」

「はいっ」

曹安民は、叔父の眼光に、嫌ともいえず、あわてて出て行ったが、しばらくすると、兵に囲ませて、一人の美人をつれて来た。

帳外の燭は、ほのかに閣の廊に揺れていた。

曹操は、佩剣を立てて、柄頭のうえに、両手をかさねたままじっと立っていた。

「召しつれました」

「大儀だった。おまえ達はみな退がってよろしい」

曹安民以下、兵たちの跫音は、彼方の衛舎へ遠ざかって行く。――そして後には、悄然たるひとりの麗人の影だけがそこに取り残されていた。