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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(三)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 頁

青空文庫

「真の策士はいたずらに動かず――という言葉をご存じありませんか」

「巧言をもって、われを欺き、他国へ逃げんとする支度であろう」

「大将軍たる者が、小人のような邪推をまわしてはいけません。それがしの妻子眷族は、みな将軍の掌の内にあります。それらの者を捨てて、この老人が身一つ長らえて何国へ逃げ行きましょうや」

「では、直ちに、韓暹に行き会い、初めに其方が申した通り、わが為に、最善の計ごとを施す気か、どうだ?」

「それがしはもとよりその気でいるのですが、肝腎なあなたはどうなんです」

「ウーム。……おれの考えか。おれもそれを希っているが、ただ悠長にだらだらと日を過しているのは嫌いだ。やるなら早くいたせ」

「それよりも、内心この陳大夫をお疑いなのでしょう。よろしい。しからばこうしましょう。せがれ陳登は質子として、ご城中に止めておき、てまえ一人で行ってきます」

「でも、敵地へ行くのには、部下がなければなるまい」

「つれてゆく部下には、ちと望みがございます」

「何十名いるか。また、部将には誰をつれて行きたいか」

「部将などいりません。供もただ一匹で結構です」

「一匹とは」

「お城の牧場から一頭の牝羊をお下げ渡してください。