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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(三)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 頁

青空文庫

もちろん粟、黍、草根まで混合してある飢饅時の糧米なので、兵の胃ぶくろは満足する筈がない。

「どんな不平を鳴らしているか」

曹操はひそかに、下級兵のつぶやきに耳をたてていた。もちろん喧々囂々たる悪声であった。

「丞相もひどい」

「これでは出征の時の宣言と約束がちがう」

「こんなもので戦えるか」

要するに、怨嗟は曹操にあつまっている。喰い物のうらみは強い。曹操は、糧米総官の王垢を呼んだ。

「不平の声がみちているな」

「どうも……取鎮めてはおりますが、如何とも」

「策はあるまい」

「ございません」

「ゆえに予は、おまえから一物を借りて、取鎮めようと思う」

「わたくし如き者から、何を借りたいと仰せられますか」

「王垢。おまえの首だ」

「げッ……?」

「すまないが貸してくれい。もし汝が死なぬとせば、三十万の兵が動乱を起す。三十万の兵と一つの首だ。――その代りそちの妻子は心にかけるな。曹操が生涯保証してやる」

「あっ。それは、それはあんまりです。丞相ッ、助けてください」

王垢は泣きだしたが、曹操は平然と、かねて云い含ませてある武士に眼くばせした。武士は飛びかかッて、王垢の首を斬り落した。