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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(三)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 頁

青空文庫

と、笑っていった。

そのことばを人々、伝え合って、

「丞相の如きこそ、真の孫子の玄妙を体得した人というのだろう」

と、大敗して帰った彼に対して、却って一そう心服を深めたということである。

しかし、さすがに今年の秋は、去年のような祝賀の祭もなかった。

とはいえ去燕雁来の季節である。洛内の旅舎は忙しい。諸州から秋の新穀鮮菜美果などおびただしく市にはいってくるし、貢来の絹布や肥馬も輻輳して賑わしい。

その中に、従者五十人ばかりを連れ、羈旅華やかな一行が、或る時、駅館の門に着いた。

「冀州の袁紹様のお使者として来た大人だそうだよ」

旅舎の者は、下へもおかないあつかいである。

この都でも、冀州の袁紹と聞けば、誰知らぬ者はない。天下の何分の一を領有する北方の大大名として、また、累代漢室に仕えた名門として、俗間の者ほど、その偉さにかけては、新興勢力の曹操などよりははるかに偉い人――という先入主をもっていた。

二

今しがた禁裏を退出した曹操は、丞相府へもどって、ひと休みしていた。

そこへ郭嘉が、

「お取次いたします」と、牀下に拝礼した。

「なんだ。書簡か」

「はい、袁紹の使いが、はるばる、都下の駅館に到着いたして、丞相にこれをご披露ねがいたいとのことで」