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さんごくし
三国志(三)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《三国志(三)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 頁
前面の防ぎに、叱っているいとまもなかったのである。それほどこの日の攻撃は烈しかった。
敵は、次々と、筏を組んで、濁水を越え、打ち払っても打ち退けてもひるまずによじ登ってくる。午の刻を過ぎる頃には、両軍の水つく屍に壁は泥血に染まり、濁水の濠も埋まるばかりに見えた。
ようやく、陽も西に傾く頃、寄手は攻めあぐねて、やや遠く退いた。早朝から一滴の水ものまず、食物もとらず奮戦をつづけていた呂布は、
「ああ。……まずこれまで」
と、ほっと、一息つくと共に、綿のように疲れた体を、一室の榻に倚せて、居眠るともなく、うつらうつらとしていた。
――と、彼の息をうかがって、音もなく床を這い寄って来た一人の将校がある。魏続であった。
呂布のもたれている戟の柄が榻の下に見える。――魏続は手をのばして榻の下からその柄を強く引っ張った。居眠っていた呂布は、不意に支えをはずされたので、
「――あっ」
と、半身を前へのめらせた。
「しめたっ」
魏続が、奪った戟を後ろへほうるとそれを合図に、一方から宋憲が躍りだして、呂布の背をつきとばした。
「何をするっ」
猛虎は、床に倒れながら、両脚で二人を蹴上げたが、とたんに魏続、宋憲の部下の兵が、どやどやと室に満ちて、吠える呂布へ折重なって、やがて鞠の如く、縛り上げてしまった。