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さんごくし

三国志(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《三国志(三)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 頁

青空文庫

なることを知っていた。――広茫無限な大自然の偉力に対して、さしもの英傑豪雄の徒も人間の小ささを、父祖代々生れながらに、知りぬいていた。

例えば。

黄河や大江の氾濫にも。

いなごの飢饉にも。

蒙古からふく黄色い風にも。

大雨、大雪、暴風、そのほかあらゆる自然の力に対しては、どうする術も知らない文化の中の英雄たり豪傑だった。

だから、その恐れを除いては、彼らは黄土の大陸の上に、人智人力の及ぶかぎりな建設もしたり、またたちまち破壊し去ったり情痴と飽慾をし尽したり、自解して腐敗を曝したり、戦ったり、和したり、歓楽に驕ったり、惨たる憂き目にただよったり――一律の秩序あるごとくまた、まったく無秩序な自由の野民の如く――実に古い歴史のながれの中に治乱興亡の人間生態図を描いてきているのであるが、そういう長い経験の下に、自然、根づよく恐れ信じられてきたものは、ただ――人間は運命の下にある。

ということだった。

運命は、人智では分らないが、天は知っている。自然は予言する。

天文や易理は、それが為に、最高な学問だった。いやすべての学問――たとえば政治、兵法、倫理までが、陰陽の二元と、天文地象の学理を基本としていた。