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さんごくし
三国志(三)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《三国志(三)(さんごくし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 312,452 字 · 628 頁
「それも一理だ」
「ことに敵は、きょう着いたばかりですから、人馬みなくたくたになって眠りこんでいましょう。いざ、出かけましょう」
初めの計画では、張飛一手で奇襲するはずだった。が、いかに奇策を行うにせよ、眼にあまる大軍なので、玄徳も自身出向くことになり、兵を二手にわけて城を出た。
張飛は、自分の計りごとが、用いられ、自分の思うまま戦えるので、愉快でならない。ひそかに必勝を信じ切っている。折から月明煌々の下、枚をふくんで敵陣に近づいた。
「どうだ?」
物見を放ってうかがわせると、
「哨兵まで眠りこけています」
との答え。
「そうだろう、おれの神算は図にあたった!」
気負いぬいていた彼。
それっと、合図の諸声あげながら、一団になって、まっしぐらに敵中へ駈け入った。
何処ぞ敵の中軍、曹操の陣や何処にある? ――と見まわしたが、四林のうちは、ただひろい空沢で零々落々、草もねむり、木も眠り沈み、どこかにせせらぐ水音の聞えるばかりで、敵の一兵だに見当らない。
「はてな? こいつは、いぶかしい?」
張飛も部下も、拍子ぬけしてうろたえた。すると林の木々や、四沢の山がいちどにどっと笑いだした。