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しんらん
親鸞
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《親鸞(しんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 頁
十
馬を打つ革鞭を持って、
「こらっ、下司」
「…………」
「六波羅のまわし者とは分っているが、誰にたのまれたかっ。何を探れと、いいつけられたのか」
「…………」
「いわぬかっ」ぴしいっと、鞭が一つ鳴る。
「ぬかせっ」
「…………」
「ぬかさぬかっ」二つめが唸る。鞭のうなるたびに、曲者の顔に赤いすじが一つずつ腫れあがった。そして、しまいには、紫いろになり、耳や、唇や、いたる所から、血しおが流れた。
「ううーむ……ううーむ……」ついには、大きなうめき声と、鞭の音とが、根くらべをするだけであった。蔵人は、精をきらして、
「よしっ、きょうはこれで、帰るとするが、また来るぞ。生命が惜しくば、口をあくことだ。考えておけ」いいすてて、帰ってしまった。
館の者たちは、眼をふさぎ耳をふさいでいた。しかし、こんな程度のことは、今の京洛の内には、ざらに行われていることだ。見馴れている蔵人などは、まだまだ手ぬるいと思って帰った様子なのである。
十
意地になって、蔵人はそれから後も、たびたびやって来ては、厩牢の曲者を拷問した。
曲者の体は、そのために業病のように腫れあがって、やぶれた傷口は柘榴の如く膿み、そこから白い骨が見えるほどだった。