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しんらん

親鸞

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《親鸞(しんらん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 566,138 字 · 1127 頁

青空文庫

六

「それっ、易行念仏門の先行者が行く手の道を邪げして、あえなく、軌にむだな生命を落すなっ」と、叱咤しながら、むらがる弥次馬の影を打ちつつ、万丈の黄塵の中へ、むげに、ぐわらぐわらと輦を押しすすめた。

大地を鳴りとどろかせて迫る軌の音と、露はらいの二人の勢いに気押されて、群集は、足をみだしてわっと道をひらいたが、小石や、泥や、瓦のつぶては、悪戯から反抗へ、反抗から激昂へと、かえって、険悪なものを孕んできて、

「何をッ、外道の眷族めっ」

「通すなっ、その、穢れ車をッ――」

疾風か、大魔軍の征矢かのように、ばらばらと、輦の扇びさしや左右の簾や、性善坊の肩や、また、玉日と綽空の膝の近くへも飛んできて、弾き返った。

ついきのうまで、深窓のほか、生きている社会とはどんなものか、近づいても見なかった玉日は、さすがに、この凄まじい人間の数が激昂したり、面白がったり、煽動したり、また、耳にするさえ顔の赤くなる猥褻な言葉を平気で叫んだり――あらゆる能力をもつ大魔小魔を地へ降ろしたかのごとく、それらの大衆が、自分の輦一つへ向って、吠え、猛び、喰ってかかるのを眺めると、さすがに、女性のたましいは、萎えおののいてしまって、生ける心地もないらしいのであった。